リクルート事件・江副浩正の真実

江副さん本人がリクルート事件の内幕を振り返った本。その時代を過去の出来事としてしか知らなかったので購入した。

うーん。。検察という組織、日本の裁判制度の不条理、マスメディアによる虐待についての憤りを彼の経験をもとに淡々と語っているが、随所に半年の逮捕抑留期間と、13年という裁判の期間の苦悩がにじみ出ており、読んでいてかなりお腹にきた。

曰く、それまで誰もが問題だと認識していなかった株譲渡や政治献金が、朝日を筆頭とする新聞各社によって過度かつ過激にニュースとして取り上げられ、当時の政治情勢によって国会でも取り上げられ続けた結果、事件となり、メディアが問題として大々的に取り上げることは国民の大きな感心事であると考えて動く特捜検察組織が調査に乗り出し、彼らのシナリオありきの供述を強要され、調書を取られたため、13年も裁判で戦うことになったという。

江副さんも冒頭に書いている通り、裁判がすでに終了した元被告という立場での見解であり、すべてが正しいとは思わないけど、その論理はかなり明快だと思う。特捜はそもそも少人数な組織のため、自発的に事件を発見するのは難しく、かつ、各地方ごとに検察組織はあることから必然的にメディアが大きな問題視するものにフォーカスを当てることになる=メディアが第3の権力になる、という話や、法で裁く部分よりもさらに一層大きな枠で倫理的に許容するかどうかの世界があるが、日本は儒教的背景により、この境界線が甘く、法のみでさばくべき裁判でもこの境界を超えているという話など、彼の経験や検察とのやり取りに基づくメディア、検察、裁判への考察はなるほどなと思わせられる。検察官もサラリーマン。上司が決めたシナリオ通りに調書を取らないといかないのだ的ストーリーはすごく怖い話。本当かわからないが、そこで粘る人間は半分虐待が行われ、強制的に署名をさせられるという取り調べの世界は外部の監査がない閉鎖した中で行うべきではない。


読んでいて改めてわかってないことを認識したけど、政治家に対する賄賂と政治献金の違いを後で証明するのってすごく難しいよね。そもそも目的のない政治献金ってあるんだろうか。結局政治献金という物自体はその政治家を支援することが最終的には自分のメリットにつながるためにやるもの。江副さんはすでに実業で大成功を納め、今更政治献金によって便宜を取る必要性は確かにないように思えるが。


後、この話はホリエモン事件ともかぶる。リクルートは当時新進気鋭のベンチャーとして既存メディアのビジネスを邪魔する存在であり、世を騒がせていた。そんなトップに対して、何が罪なのかいまいちはっきりせず、メディアが倫理的な嫌悪感をあげつらい、被告として長期勾留し、社会的制裁を加える。


いつの時代も日本では出る杭は打たれるということか。
打たれたくなかったら三木谷さんのように目立ちすぎず既得権益者を敬う姿勢が大事かも。


リクルート事件・江副浩正の真実

リクルート事件・江副浩正の真実