戦争広告代理店

アメリカのPR企業がいかにしてボスニア紛争において世論を操作し、セルビア=加害者、ボスニア・ヘルツェゴビナ=被害者の構図を構築していったのかを描いたNHKスペシャルを本としてまとめたもの。NHKスペシャルフリークなので完全につぼにはまった。

日本ではPRというとなじみがなく、広告と同一視している場合があるが、あらゆる方法を用いて顧客企業が求める世論を構築することだそう。

そもそも国際政治におけるPRは外務省などの国の機関が担う性質のものだが、アメリカにおいては大統領が変わるとともに各機関の担当も入れ替えになるため、外部にそのような人材が流出することから企業として活動するものも産まれたようだ。
おもしろいのがアメリカには企業だけでなく国自体のPRを扱う企業もあり、本作のように自国だけでなく他国を顧客とする企業もあることだ。本国アメリカにとって不利益になる場合もあるんじゃないのかという疑問がわいたがどうも政府に報告書を提出しているということなので基本としてアメリカ政府には情報は流されるという前提で成り立っているのかも。うーん。そんなのありなのかな。
こういうたぐいのデメリットはありつつもアメリカ系PR企業を利用するのは、アメリカの世論を動かすことが結果としてアメリカ政府を、またその結果として世界を動かすというドミノ構造にあるからだろう。

著者曰く、日本の外務省はこれらPR力が基本弱い上に外部のPR会社の活用が他国に比べて全然できていないと指摘している。あまりやりすぎると、それこそ情報操作、マインドコントロール的な話につながりかねない性質のものだけど確実にいると同感。日本の世論はそもそも偏っているマスメディアによる影響が大きすぎる。戦争責任問題や払いまくってるODAなどの点をいい意味で誘導する施策があってもいいのではと思う。

ちなみにそもそも論として、この話は完全に内密、NDAの世界。PR企業の担当者含め、いろんな人間がインタビューに応じているが、なぜ1国のPRの裏筋をここまで開示できるのだろうかと疑問に思った。最後あたりに書いてあったが、ボスニア政府の支払いがきちんとしていなかったからなのか。まあPR企業のいいPRにはなったろうけど。


まあ本当に面白かった。おなかいっぱいです。